どんなに偉い人だって、プライベートなわずらいごとがあり、心を悩ませてるんですね。
国家の一大事に直面したとき、積年のうっぷんを晴らすべく。
自らの複雑に絡み合う感情に立ち向かう姿は、心に深く刻まれて忘れられません。
ジョージ6世が国民から愛される王になる道筋を、史実を基にして描いた作品です。
『英国王のスピーチ』の、あらすじをザックリご紹介。
のちのジョージ6世、ヨーク公アルバート。
イギリス国王ジョージ5世の、次男です。
幼い頃から、吃音(きつおん)に悩まされていて、人前に出ることが好きではありません。
父王は厳しい人でした。
さまざまな式典でスピーチするよう命じます。
アルバート王子は、聴衆からも落胆され、心に深い傷を重ねるのでした。
そばで見守り続けている、ヨーク公妃エリザベス。
ある日、言語療法士ライオネル・ローグのもとを訪れた彼女は……。
時代背景も、サクッとご紹介。
ジョージ6世は1895年12月に、お生まれになりました。
野球選手のベーブ・ルースや、喜劇俳優のバスター・キートンと、同い年なんですね。
そのとき日本は、明治28年。
前年の夏に始まった日清戦争が終結し、日清講和条約を結んだのは1895年4月のこと。
日清戦争は、ヨーロッパ諸国からみても、東アジアの国際情勢が激変する一大事だったんですね。
ジョージ6世は、1936年12月、イギリス国王に即位しました。
大英帝国が、徐々に力を失っていく時代。
そして、大きな戦争が続いた時代。
植民地支配する側、される側……。
もともと知っていた事柄は、より詳しく。
そうでない事柄は、新鮮に。
知的探究心をわきあがらせる映画です。
ちなみに。
劇中に登場する、まだ幼い王女エリザベス。
父王のあと、25才で即位した、今の英国女王エリザベス2世なんですね。
ジョージ6世は、1952年2月、56才で崩御されました。
心ひかれるキャストは、こちら。
この映画には、大英帝国勲章を受章した方々も、出演されてますね。
英国だけでなく各国で活躍する名優の共演に、心が弾んでしまいます。
『英国王のスピーチ』での熱演について語ろうかと思ったんですが。
今回は趣向を変えてみました。
コリン・ファースは、ジョージ6世を演じています。
イングランド出身のコリン・ファース。
CBE(大英帝国三等勲爵士)を受勲してますね。
コリン・ファースといえば、貴族や弁護士・スパイまで、さまざまな役柄を演じてまして。
私の大好きな俳優さんのひとりなのです。
『英国王のスピーチ』は、アカデミー賞主演男優賞も授賞する、素晴らしい演技だったのですが。
私としましては、ジェニファー・イーリーとの共演も、たいへんワクワクいたしました。
ジェニファー・イーリーは、ローグ夫人を演じました。
ジョージ6世の言語療法士として登場する、ライオネル・ローグ。
彼の奥様、ローグ夫人を演じたのが、ジェニファー・イーリーです。
彼女の出演シーンは、ほんのわずかでしたね。
私も初めて観たときは、気がつかなくて。
エンディングロールで彼女の名前を見つけて、小躍りしました。
コリン・ファースとジェニファー・イーリーは、BBCドラマ『高慢と偏見』のメインキャスト。
今でも大好きな作品です。
とうてい一言では言い尽くせないので、あらためて語りたいと思います。
ライオネル・ローグに扮したのは、ジェフリー・ラッシュ。
ジェフリー・ラッシュは、オーストラリア出身ですね。
『恋におちたシェイクスピア』での好演も、印象深くて。
『英国王のスピーチ』ではライオネルが、シェイクスピアを引用しまくるんですよね。
コリン・ファースも『恋におちたシェイクスピア』に出てまして。
私は勝手に、嬉しくなったり、しみじみしたり、いろんな楽しみ方をしちゃいました。
ヘレナ・ボナム=カーターは、エリザベス妃を演じました。
ヘレナ・ボナム=カーターも、イングランド出身で、CBEを受勲しています。
シェイクスピアの戯曲や、ティム・バートン監督作品、『ハリーポッター』シリーズなど。
彼女もどんな役柄でも演じきってしまうので、最後まで気を抜いていられない。
『英国王のスピーチ』を観ている間、私は勝手な先入観から、ソワソワしちゃいました。
このまま敬意を払って、信じてよいのか
それとも、どこかで豹変するのか。
エリザベス妃は、とても慈愛に満ちていて、ほっこりしました。
英国王を演じたのは、コリン・ファース。たやすく話せない「心のうち」を見事に表現しています。
この映画を観て、ジョージ6世は名君だったんだな、と実感しました。
勇敢で忍耐強く、真面目で慎み深い。
ウイットに富み、憂うべきを憂い。
家族を愛し、家族に愛されています。
(王とは)道徳を以て天下を率いる者
辞書で王の意味を調べてみたら、こんな一項がありました。
ズドンと心に響きます。スッと納得できました。
ヨーク公の、バーティの、そしてジョージ6世としての、真情を吐露する場面が幾度かあるのですが……。
どのシーンも真摯で、心揺さぶられてしまいます。
まだ幼かった頃の思い出。
兄、エドワード8世への思い。
ほかにも、たくさんありましたね。
たとえ王族でなくても、おいそれと話せることではない心のうち。
ライオネル・ローグになら話してもいいと思えるようになって、よかったなぁ。
自分のことのように嬉しくなりました。
人を支えること、人を育てることは、容易ではありませんね。
だからこそ重要な意味があるのでは、と思えてならないのです。
『英国王のスピーチ』は、2010年に作られた、イギリス・アメリカ・オーストラリアの合作映画です。
【監督】トム・フーパー
【出演】コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、ガイ・ピアース、ティモシー・スポール、ジェニファー・イーリー、マイケル・ガンボンほか。
ライオネル・ローグとの出会いも素晴らしいのですが。
ジョージ6世とエリザベス妃が、相手のことを大切に思い合っているところ。
ほんとうに素敵でした。