モダンホラーの帝王として名高いスティーヴン・キング。
彼の半自伝的な中編小説を、名匠ロブ・ライナー監督が映像化した作品です。
リヴァー・フェニックスをはじめ、少年たちが夏の終わりに探検する物語。
もう二度と起こらない大事なできごとを通して、彼らが向き合い、変化していく姿が描かれてます。
ハラハラしたり、切なくなったり。
あらゆる感情がわきあがり、心の中は大渋滞でした。
『スタンド・バイ・ミー』の、あらすじをザックリご紹介。
ある日。
作家のゴードンは、新聞記事に目をとめます。
それはクリストファー・チェンバースという、弁護士が亡くなったことを伝えていました。
物思いに沈む、ゴードンの脳裏によみがえるのは……。
遠く懐かしい、あの暑くて熱い夏の終わりの思い出でした。
キャッスルロックは、そこで暮らす少年たちから見ても分かるような、小さな町。
悪い噂は、あっという間に広まりますし。
珍しいことは、めったに起こりません。
秋から中学生になる、ゴーディ・クリス・テディ・ヴァーン。
個性的な4人は、しょっちゅう一緒に過ごしてます。
ツリーハウスに集まってやんちゃしたり、おしゃべりしたり、とても楽しそう。
そして、それぞれ家庭の問題を抱えていました。
夏も終わろうとしている頃。
4人にとって、耳寄りな話が舞い込んできました。
数日前から行方不明になってる子供の、有力な情報です。
それを見つけたらヒーローになれる!
妙に盛り上がる4人組。
森の奥を目指して、冒険の旅に出るのですが……。
主なキャストは、こちらの4人。あっと驚く名優も。
12歳の少年たち。
みんな、生き生きとしてましたね。
脇を固めるキャストも、素敵。
不良グループのリーダー、エース(キーファー・サザーランド)が怖い怖い。
何をしでかすか分からない、何とも言えない迫力で、ゾッとしました。
家族の話は、どれも心がヒリヒリする。
ゴーディのお兄さん、デニー(ジョン・キューザック)のエピソードもつらいものでした。
人間味のあるクリス。彼を演じた、リヴァー・フェニックスの傑出した存在感。
陰のある、やんちゃな少年。
クリスは賢い一面もあり、リーダーシップを発揮します。
彼の兄、アイボールは不良グループの一員で、ゴーディにも意地悪してましたね。
父親も、素行の悪さを問題視されてる人。
クリスは他人から誤解されることに、慣らされてしまってるように見えました。
自分の将来に、希望が持てなくなってるのでは?
クリスの、ゴーディに掛ける言葉が秀逸なんです。
まるで肉親に対する心遣いのよう。
リヴァー・フェニックスが持っている、内面の輝きのようなものを感じてしまいます。
見放される恐ろしさを痛感する、ゴーディ。
ウィル・ウィートンが演じたゴーディは、他の3人とは少し違う、不幸な境遇に甘んじています。
彼にも兄がいたのですが、少し前に亡くしてるんです。
家族の期待を一身に背負い、弟の才能を認めてくれる、出来過ぎなくらい良いお兄さん。
デニーを亡くした両親の悲しみは深く、もう一人の息子に冷たい態度をとってましたね。
ゴーディの、面白い物語を思いつく才能は、心が壊れてしまわないための防御壁なのかも。
大人になった彼を演じた、リチャード・ドレイファスも印象的でした。
戦いは、テディに何をもたらしたのか。
ちょっぴり屈折してるように見えるテディ。
コリー・フェルドマンが演じています。
軍に憧れを抱いてるのは、お父さんのことが大好きだから。ですよね?
テディの父は、かつてノルマンディーで勇敢に戦った兵士なんだそう。
戦争を体験してない私には、想像することしか出来ませんが。恐ろしくて身震いします。
テディは眼鏡をかけていて、耳に傷を負ってることから、念願かなわなかったようです。
お父さんの状態や、耳を怪我した経緯など、全部ひっくるめて考えても答えが出ません。
テディにとって、幸せとは何なんでしょう。
原作とは違う?ヴァーンの人生。
ジェリー・オコンネル扮する、ヴァーン。
4人の中では一番、子供らしい子供なのかもしれませんね。
ぽっちゃり気味の彼は、見た目で判断されたり、いじられたり。
大人も子供も関係なく、社会には理不尽なことがあって、なんとか折り合いつけなきゃならない。厳しいなぁ。
彼の兄も、不良グループの一員ですね。
探検のきっかけを作った人物でもあります。
原作と映画では、相違点もありましたね。
リスペクトを感じる改変は、映像化の醍醐味のひとつだなって思います。
その後のヴァーンの人生も、楽しそうに笑ってた、あの夏の4人のようだったらいいな。
少年たちが向き合った、3つのBとは?
BODY
原作のタイトルは『THE BODY』。
英語で、死体という意味ですね。
少年たちが度胸試しのような旅をする、きっかけでもあります。
「body」=(人間・動物の)身体、(木の)幹、(ものの)主要部。
といった意味もあるので、私は勝手に、こう考えました。
わずか数日の探検で、少年たちは心身ともに大きくなった。
……あなたは、どうお考えになりますか?
ちなみに。
映画のタイトルは『Stand by Me』。
日本で出版される原作のタイトルも、『スタンド・バイ・ミー』に変わりました。
この小説は『Different Seasons』という中篇作品集の1編なんですね。
こちらは今も『恐怖の四季』として出版されています。
BORDER
「border」=国境、境界、縁(ふち)。
という意味なので、またまた勝手に考えてみました。
4人の少年たちが、歩いて日帰りできない所へ行く。
住み慣れた、小さな自分たちの町。
いわばテリトリーとも言える場所から、2日間とは言え、出ていく。
鉄橋も、ヒルがウジャウジャいる沼も、自分の足で越えていく。
おまけに。
親友だからこそ簡単には見せられない、心の壁をも乗り越えるような。
そんな気がするのです。
BOY
ゴーディやクリスは、年齢的には「boy」だけど。
精神的に「man」になったんじゃないでしょうか。
大人から見たら、彼らはちっちゃいのかもしれませんが。
たった2日で、ほんとうに成長しましたよね。
繰り返しになって、ごめんなさい。
映画のタイトルは『The BODY』じゃなくて『Stand by Me』。
映画の主題歌も、同じくですね。
「Stand by Me」=隣に立ってください。そばにいてください。私を支持してください。
こんな意味でしょうか。
なかなか意味深だなって思います。
映画のクライマックスで、4人が二手に分かれる場面がありますね。
そして、探検を終え、家路についた彼ら。
ゴーディとクリスは、テディとヴァーンとは疎遠になります。
ゴーディとクリスも、それぞれの進路をとって、別々の道を歩んでいく。
エンディングで、ベン・E・キングの『スタンド・バイ・ミー』が流れたとき。
もう二度とあの夏の終わりには戻れないんだと、思い知らされたような気がして。
とても切なくなりました。
秋はもの悲しい気分になるので、やっぱり少し苦手です。
この映画を観るたびに、楽しいことだけ覚えてる、子供時代を懐かしく思い出し……。
とても幸せな気持ちになれるのです。
『スタンド・バイ・ミー』の、スタッフ・キャスト・製作年など。
【出演】ウィル・ウィートン、リヴァー・フェニックス、コリー・フェルドマン、ジェリー・オコンネル、キーファー・サザーランド、ケイシー・シマーシュコ、ブラッドリー・グレッグ、マーシャル・ベル、フランシス・リー・マッケイン、ブルース・カービィ、スコット・ビーチ、ジョン・キューザック、リチャード・ドレイファスほか。
【監督】ロブ・ライナー
【脚色】レイノルド・ギデオン、ブルース・A・エヴァンス。
【原作】『スタンド・バイ・ミー(恐怖の四季 秋冬編)』スティーヴン・キング
【主題歌】『スタンド・バイ・ミー』ベン・E・キング
【製作年・国】1986年、アメリカ。
【原題】『Stand by Me』
原作の「スタンド・バイ・ミー」は「恐怖の四季」の秋だとお伝えしましたが。
「恐怖の四季」の春は、映画『ショーシャンクの空に』の原作「刑務所のリタ・ヘイワース」ですね。
ちなみに、夏は『ゴールデンボーイ』。
残る冬も、映画化されるのでしょうか?
楽しみにしたいと思います。