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あるときは、スキーヤー。
またあるときは、研究員。
その正体は、脅迫犯?
事の発端となる重要人物、のハズなのに。
あっという間に退場する、葛原克也。
不特定多数の人命を危険にさらした張本人です。
けれども、なぜか憎めない。
どうしてでしょう。
『疾風ロンド』の、あらすじ
ほの暗い、うっそうとした雪山。
ひとりのスキーヤーが稜線を、木々の間を滑っていきます。
不穏なBGM。
効果的に差し込まれる、細菌を培養してるようなシーン。
薄気味悪さが、いや増します。
林の中で、辺りをきょろきょろ見回して。
適当な木の下に、積もっている雪を掘り起こし、粉末入りのガラス瓶を埋めました。
スキーヤーの名は、葛原。
医科学研究所をクビになった、元研究員です。
ガラス瓶に入ってるのは、K-55。
きわめて危険な、究極の生物兵器なのでした。
日が変わって、月曜日。
医科学研究所に勤める栗林は、違法な炭疽菌の紛失に気づき、びっくり仰天。
大慌てで、所長室に駆け込みます。
報告を聞いても落ち着いてる、東郷所長。
すでに脅迫状を受け取っていました。
「研究所にある最重要な品物は、こちらの手にある。」
保身のために、内密に取り戻すよう指示する所長。
半ば脅迫めいた言葉に、渋々従う栗林。
このあと事態は二転三転。
栗林は、わずかな手がかりをもとに、野沢温泉スキー場へと向かうのですが……。
豪華キャストの共演。
医科学研究所の補助研究員、折口真奈美(堀内敬子)。
謎の人物、ワダハルオ(ムロツヨシ)。
この二人も、キーパーソンでしたね。
栗林の一人息子、秀人(濱田龍臣)。
野沢温泉スキー場が地元の、川端くん(前田旺志郎)。
ともに、中学2年生です。
濱田くんも前田くんも、大きくなりましたね。
劇場公開当時、15~16歳かな。
お二人とも同い年、2000年生まれなんですね。
泰鵬大学医科学研究所、東郷所長(柄本明)。
東郷雅臣。
こんな上司は嫌だ、の典型のような人。
「ワシは、知らん!」
責任逃れの言葉を、ヒステリックに連発します。
いっそ清々しいのかな。
見事なまでに悪人です。
横滑り可能なほど、権力を持っているらしい。
叩けば埃が出るに違いない。
エキセントリックな人を演じる柄本明さん、久しぶりに観ました。
あっけにとられるほど、あざやか。
主任研究員、栗林和幸(阿部寛)。
葛原の、直属の上司だったのかな。
所長いわく、研究者くずれの管理職。
ひどい言われようです。
14歳の息子と、二人暮らしの栗林。
親子関係は、良好とは言えませんね。
奥様の遺影に向かって、ぼやいてる姿が切ない。
月曜日の夜、栗林はお寿司を買って帰宅するんです。
リビングの時計は、9時を回っていました。
息子は、リビングにあるテレビで、ゲームをしていて。
テーブル上には、食べ終わったファストフードの包装紙や容器。
お父さん、連絡しなかったのかな?
あの状況で、お寿司の話題を振るなんて。
反抗期じゃなくても、不機嫌になりますよ。
究極の生物兵器を盗まれて、かつての部下が亡くなったのに、お寿司食べちゃう栗林。
彼の人となりを知る、最適なエピソードだと思いました。
いろいろ残念な、葛原克也(戸次重幸)。できれば、もっと見ていたかった。
戸次重幸さんが演じた、葛原。
冒頭で姿を消しますが、強烈な存在感を放ってました。
優秀な研究員だったのに。
葛原は、医科学研究所でワクチンを開発していました。
ところが出来上がったのは、どんなワクチンも効かない炭疽菌。
あってはならない、究極の兵器です。
K-55自体は、危険で違法な生物兵器だけど。
やり方しだいで、いざというとき人類を救う、大発明・大発見となる可能性もあったのでは?
俺は天才だと言って、所長に食ってかかるシーン。
葛原の絶望が、よく分かる場面でした。
ゲームはこれから、だったのに。
K-55は、大勢の人が亡くなるほど、危険な物質です。
しかも事情を知らない一般の人が、容器を素手で掴んだり、ポケットに入れたりしても大丈夫。
なんて扱いやすい生物兵器なんでしょう。
危険すぎる。
あのまま研究所で、さらなる改良を加えたら……。
それこそ一生安泰なくらい、富を得たかもしれません。
「さあ、ゲームの始まりだ」
事の重大さにおそれるような、人生を懸けた大勝負に挑むような。
複雑な感情から湧きあがる、高揚しているような表情。
とても印象に残ります。
彼にとっては、始まる前に終わってしまいましたが。
『疾風ロンド』は、ここから始まります。
『疾風ロンド』の、スタッフ・キャスト・製作年など。
【出演】阿部寛、大倉忠義、大島優子、ムロツヨシ、堀内敬子、戸次重幸、濱田龍臣、志尊淳、野間口徹、麻生祐未、望月歩、前田旺志郎、久保田紗友、堀部圭亮、田中要次、でんでん、柄本明ほか。
【監督】吉田照幸
【脚本】ハセベバクシンオー、吉田照幸。
【原作】東野圭吾「疾風ロンド」
【主題歌】B’z「フキアレナサイ」
【製作年・国】2016年、日本。
葛原の表情と言えば、顕微鏡で観察して、悪い顔でニヤリと笑うところ。
常軌を逸した感じが出てましたね。
この映画は、人の命や家族もテーマにしてますが、コメディだと割り切って観たほうが楽しめるのかもしれません。