【三度目の殺人】殺めたのは、三人の父親?不気味な影響力をあらわにする三隅。からめとられるように変化する重盛。役所広司と福山雅治の表現力に言葉を失う作品。

30年前にも、人を殺めている三隅高司
今また容疑者として逮捕され、殺人罪に問われています。

途中から、三隅の弁護人に加わる重盛朋章
真実はともかく、裁判に勝つことが最優先というスタンスでしたが……。

主張を二転三転させる、三隅。
重盛は、まるで感化されたかのよう。
彼のポリシーは、揺らいでいきます。

いるだけで、周りの人を傷つけるとは?
誰かの役に立つことって?

『三度目の殺人』は、正解を教えてくれない映画だなって感じました。
あれこれ勝手に考察してみたいと思います。


三度目の殺人

『三度目の殺人』の、あらすじを簡単にご紹介。

平成29年10月11日、午前0時30分頃。
多摩川の河川敷で事件が発生。
男性が亡くなりました。

被害者は食品加工工場を営んでいて、そこを辞めて間もない三隅が逮捕されます。
早々に自白した彼は、刑事被告人として起訴されました。

たえ難いことですが、重いものから軽いものまで、毎日どこかで事件は起こり。
司法機関に持ち込まれ、裁判が行われます。

昼夜を問わず、仕事に忙殺されてる重盛弁護士
彼にとって多摩川河川敷の事件は、極刑は免れない、ありふれた裁判になるはずでした。

ある日のこと。
重盛は、二人の弁護士と共に、横浜拘置支所を訪れます。
一人は、重盛の法律事務所に軒先だけ借りている弁護士の、川島
もう一人は、検事を辞めて弁護士になった、長い付き合いのある摂津です。

摂津は、一人で何とかなると考え、三隅の弁護を引き受けましたが。
会うたびに言うことがコロコロ変わる彼の扱いに困って、司法修習で同期だった重盛に相談したのです。

縁もゆかりもないと思われた重盛と三隅。
けれども30年前に起こった一度目の事件の裁判が、二人をつなぎ合わせます。

「理解とか共感とか、弁護するのに、そういうの要らないよ」
きっぱりと言う重盛は、ドライな弁護士のように見えました。

依頼人の利益になる証拠を集めて、多少なりとも刑を軽くするべく、調査を始める重盛と川島。

犯行現場に向かう途中で見かけた少女は、被害者の娘・山中咲江でした。

今回クローズアップした登場人物は、こちらの二人。脇を固めるキャストについても、サラッと。

三隅の弁護人を演じた、吉田鋼太郎さん(摂津弁護士)、満島真之介さん(川島弁護士)。

ヤメ検の摂津は、犯罪者に厳しめ。
軒弁の若手弁護士・川島は、ピュアというか。
人だったり、法だったり、信じるものがある(ように見える)。

重盛を客観的に見るためにも、彼らの視点は重要なんでしょうね。

市川実日子さんが演じたのは、篠原検察官。
三隅の裁判に立ち会います。

彼女は、私が一番惹かれたキャラクターなんです。
話が脱線しちゃうので、また改めてしたためますね。

三隅を演じたのは、役所広司さん。

三隅高司(みすみ たかし)。
生年月日は、昭和34年12月1日。
故郷は、北海道。
有限会社山中食品を辞めたのは、9月30日。
住んでたアパートの家賃から、好きな食べ物まで。
彼の個人情報は、映画を観てる私にも、だだもれです。

彼が会話してる場面も、一人でいるシーンも、しっかり描写されてます。
それでも、まったく分からない。

山中社長を殴ったのは、三隅に間違いないと思うんです。
思うんですけど、いや待てよ。
息をしてなかった、ってホント?
三隅が気にしてる、手のヤケド
話してくれてない真実が、まだあるのでは?

三隅は、なのか人間なのか、それとも本当にだったのか。

役所広司さんの表現力が素晴らしくて、映画を観るたび、頭の中が混乱してしまいます。

重盛弁護士に扮したのは、福山雅治さん。

序盤のシュッとした重盛は、福山さんのイメージぴったり。

重盛が、食事代わりにゼリー飲料を口にしたり、相手の心証に目ざとい人だったり。

物語が進むにつれて、どんどん変化するさまを表現する福山さん。
重盛の戸惑いや葛藤など、すごく伝わってきました。

いるだけで周りの人を傷つける、とは?

重盛に向かって、三隅が思いを吐き出すように語りかける場面がありますね。

生まれてこなければ良かったと思っていた、と。
いるだけで、周りの人を傷つけるんだ、と。

三隅は、自分は大きな影響を与える人物だと、自覚しているっていうことかな。

三隅の能力を信じてるのは、三隅と咲江。
手と手を合わせるシーンのある重盛は、半信半疑だったように見えました。

私には、彼のような能力はありません。
能力を持ってる人は、実在するだろうと思っています。
きっと、身を切るような痛みを伴うんでしょうね。

三隅の絶望の深さを強烈に感じる一言です。

三隅が殺めた、三人の父親とは。

火をつけたり、殴ったり。
手段は、それだけとは限りませんよね。
社会から、あるいは特定の人のから、抹殺するのも殺人なのでは?

一人目は、三隅恵の父。

恵(めぐみ)というのは、三隅の娘さんの名前でしたね。
有利な証言をしてもらおうと思った重盛たちは、北海道にいるはずの彼女を訪ねます。

重盛たちの思惑は外れましたし。
無断で娘に会いに行ったことを知り、三隅は激怒しました。

留萌の事件で三隅が問われた罪は、高利貸し2人に対する犯行です。
おそらく地元は大騒ぎになったでしょうね。
一度目の事件当時、まだ幼かった恵さん。
彼女から父親を奪ったのは、三隅本人です。

そして、二度目の事件が起こり。
恵さんは、再び親を亡くし、日常まで失うことになってしまいました。

二人目は、山中咲江の父。

咲江の言葉が真実かどうか、曖昧なまま終わったと思ってます。

山中光男が、娘にしたことが真実ならば、ほんとうに許せない。
心の底から憎悪します。

山中社長の明白な罪は、食品偽装ですね。
食いしん坊の私には、これもホントに許せない。
家族や従業員の生活を守るため、かもしれませんがダメです。

とはいえ、命を奪っていい理由にはなりませんよね。
ほんとうに悪いことをした人が、それ相応の報いを受ける世の中になりますように。

咲江にとって、父を亡くしたことは、救いでもあるのなら。それは何よりツライです。

三人目は、重盛結花の父。

結花(ゆか)は、重盛朋章の娘です。

三隅と深くかかわる前の、重盛弁護士。
発言も食べるものも、あんまり温かみが感じられませんでした。

娘を思う父心は伝わりますが、じゃっかん冷ややかでしたよね。

三隅と手を合わせてからの、重盛。
弁護士としては致命的なのかもしれませんが、実に人間らしい。

結花が亡くしたのは、家庭をかえりみない父ではないでしょうか。

これからは、きっと何かが変わるはず。
結花にとっても、朋章にとっても、幸せな変化でありますように。

誰かの役に立つこと、って?

映画の終盤。
重盛は、三隅に会いに行きますね。
疑問に思っていたことを、尋ねるというか、確認したかったというか。

やっぱり本音をはぐらかされる重盛ですが。
彼が三隅と話してるとき、ずいぶん穏やかになったなぁって感じました。

どうなんでしょう、弁護士さんとしてはいい変化なのかよくない変化なのか……。

思慮の浅い私には、今の重盛の方がいいと思えますし。
三隅が問われた罪は、法律的にも道徳的にも罰せられるべきものですが。

それによって、咲江が解き放たれたなら。
人が人を裁くということ、不条理なこともあるということ、そういうものを考えるきっかけになったのなら。

三隅は、誰かの役に立つことができたんだと思うんです。

『三度目の殺人』は、2017年に公開された、日本映画です。

【原案・監督・脚本・編集】是枝裕和
【出演】福山雅治、役所広司、広瀬すず、吉田鋼太郎、満島真之介、市川実日子、橋爪功、斉藤由貴、松岡依都美、蒔田彩珠、品川徹、根岸季衣、高橋努、小倉一郎、井上肇ほか。

はろこ

私の勝手な想像は、とどまるところを知らないようです。
あまりにもグルグル考え込んでしまったので、しばらく『三度目の殺人』について語ってしまうかもしれません。
お付き合い下さいましたら嬉しいです。