散々な目にあってるのに、全力で演じきる、トニー・カーティス。
すっかり夢中になりました。
『パリで一緒に』は
1964年に公開された、アメリカ映画です。
監督は、リチャード・クワイン。
出演は、オードリー・ヘプバーン、ウィリアム・ホールデン、トニー・カーティス、ノエル・カワードほか。
マレーネ・ディートリッヒ、メル・ファーラー、ピーター・セラーズなど、カメオ出演も実に豪華。
音楽は、ネルソン・リドルです。
脚本家のリチャードが、何気無く言った言葉にも、生き生きと答える、タイピストのガブリエル。
彼は、出会って間もない彼女に、だんだん惹かれていくのですが・・・。
「パリ祭は、デートの約束があるの」
「フィリップと、一日一緒に過ごすの」
ガブリエルからインスパイアされたのか、
締切の迫った新作「エッフェル塔を盗んだ娘」に、まるで自分たちのような登場人物を設定しました。
その配役は・・・。
パリ祭で荒稼ぎしようと企む、怪盗リックに、リチャード。
パリ祭で賑わう街で、恋人と待ち合わせしているギャビーに、ガブリエル。
そして。
ギャビーの恋人モリスには、会ったこともないガブリエルのお相手、フィリップ。
そして、脚本の執筆の進行に合せて、「劇中劇」が展開していきます。
若手俳優の、フィリップ。
ガブリエルから、話を聞いたリチャード。
フィリップにライバル心を持ったのでしょうか。
まず最初に設定した、モリスは・・・。
「男っぷりは、あまり良くない」でした。
ガブリエルは、すかさず反論します。
「フィリップは、いい男よ。
トニー・カーティスに似てるの」
そのセリフを追うように、サングラス姿のモリスが、大写しになりました。
カッコよくサングラスを外しながら、ドヤ顔してるのは、トニー・カーティス。
「えっ?・・・ええっ!」
私がビックリしてる間にも、ストーリーはサクサク進みます。
「新劇型の俳優」って?
どんな演技をする人なのか、よく分からないんですが・・・。
リチャードが目の敵にしてることは、とても伝わります。
新劇型は、セリフを口の中でモグモグ言って、脚本家が苦心した言葉のリズムを、台無しにする。
ということで・・・。
新進気鋭の俳優、モリスは、「端役で終わる運命の、新劇型の俳優にしか見えない仕草」で、ギャビーに失礼な態度を取る、という設定になりました。
このモリスを演じきる、トニー・カーティスが、抜群に滑稽なんです。すごい!
セリフが、つっかえつっかえだったり、おぼつかない感じだったり。
振る舞いも、わざとらしかったり。
いかにも新劇型の演技をしていますよ、という表現だと思ったんですが・・・。
どうやら、それだけでもなさそうです。
おそらくリチャードが、あれこれ思量しながら、脚本を口述しているからでしょう。
脚本家に操られてますよ風の演技に、観ている私は、声をあげて笑ってしまいました。
モリスの受難は、まだまだ続きます。
パリ祭は一日中デート、というシーンは、早々にカットされます。
モリス、というかフィリップは、怪盗リックに、見せ場を奪われっぱなし。
ようやく出番が来ても、脇役だ、端役だと、けちょんけちょんに言われます。
劇中劇とはいえ、あんまりだ、と観ている私も思うんですが・・・。
トニー・カーティスの演技に、すっかり引き込まれて、登場シーンが待ち遠しくなるのです。
踏んだり蹴ったりな目にあうのに、こんなに爆笑させるなんて。トニー・カーティスが大好きになりました。
『パリで一緒に』のラスト、ガブリエルはデートしています。
「そう来たか、フィリップ」なオチでした。