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悔やんでも悔やみきれないできごと、ありませんか?
生きてると、いろんなことが起こりますね。
できそこないの私は、やりそこねてばかり。
わからないことだらけで、取り返しのつかないことを繰り返してしまうんです。
日日是好日(にちにちこれこうじつ)。
一期一会(いちごいちえ)。
日常会話では、あまり馴染みのない言葉。
全身にしみわたるようでした。
『日日是好日』は、かなしみの真っただ中にいるときに、そっと寄り添い、ほのかに照らしてくれるような映画だと思います。
『日日是好日』の、あらすじをザックリご紹介。
映画は、典子のモノローグから始まります。
10歳のとき、家族で映画を観に行ったこと。
それは古いイタリア映画で、何がいいのかさっぱり分からない作品だったこと。
1993年。20歳の典子は、大学生になりました。
一生を懸けられるような、何かを見つけたい。
けれど、本当にしたいことが、何なのか分からないまま、時は過ぎてしまう。
典子は、真面目、理屈っぽい、努力家と言われる自分を、イヤだなって感じています。
でも、どうにもならなくて。
ある日、いとこの美智子が訪ねてきました。
彼女と典子は同い年。
美智子は親元を離れ、東京で一人暮らしをしている大学生です。
典子のお家にお泊まりするのも、茶飯事みたい。
その晩、世間話の延長で、タダモノじゃない武田さんの話題になり。
典子と美智子は、二人で一緒に、武田先生の茶道教室に通うことになりました。
お稽古の初日。
掛軸の言葉を解説してもらったり、ふくさの折り方を習ったり。
先生がたててくれたお茶をいただいて。
アヤメまんじゅうは、かわいくて美味しくて。
典子と美智子は、初めて触れる茶道の世界に、とまどったり魅せられたり。
「続かないかも知れない」と思うときもあるけれど、お茶の魅力に引き込まれていくのでした。
季節はとどまることなく流れていきます。
やりたいこと、なりたいもの。
出会ったり、離れたり。大切な人と別れたり。
仕事や恋愛、人生の転機など。
わかれ道で動けなくなるようなとき、典子のそばにあったものは……。
「日日是好日」という、言葉の意味もサクッと。
映画のなかの、武田先生の言葉にハッとさせられました。
こちらは、その一部分。
「こうして、同じことができるってことが幸せ」
日日是好日は、いにしえの高名な禅師の言葉、禅語なんだそうですね。
五文字には、毎日毎日よい日だ、という意味がギュッっと凝縮されてるみたい。ですが。
いい日も、そうでない日も、かけがえのない一日であり。
そう気づけたことこそ、最もよいこと。
そういう意味でも、あるのでは?
武田先生の言葉を、樹木希林さんを通して聞くと、骨身にしみて感じるのです。
主な登場人物を、さらりとご紹介。
心に残る人物が大勢、登場する作品ですね。
大学生の典子が茶道を習い始め、物語は人生のように揺れ動き、時は流れていきます。
典子の父を演じた、鶴見辰吾さん。
武田先生の親戚、雪野を演じた鶴田真由さん。
印象的で、忘れることができません。
別の機会に、おもいっきり語らせてくださいませ。
では、こちらのお三方について。
典子
黒木華さんが20歳から40代までを演じた、主人公の典子。
彼女の自宅は、横浜近郊なのかしら。
父・母・弟、そして典子の4人家族です。
映画『日日是好日』の、時の長さは約100分。
典子の半生が詰まってるけど、決して駆け足ではなくて。
折々の、風情というか由緒というか。
物事の起こりから、今に至るまでのすじみちが、丁寧に描かれていて、典子の友達になれた気分も味わえました。
武田先生
樹木希林さんが演じた、武田先生。
典子にとって、茶道だけじゃなく、人生のお師匠さまでもあるのでは?
なんと、希林さん。
茶道は、ほぼ未経験だったそうです。
すごいなぁ。
映画を観たあと知ったのですが、信じがたいほど見事なお作法。
武田先生は、典子の母からタダモノじゃないと言われてましたね。
おじぎがキレイなのは、もちろん。
先生のバックボーンが、ほんの少し明かされる場面がありまして。
いい日と、そうじゃない日と。
さまざまな思いを重ねて、すぐれた方になるんだなと実感しました。
美智子
多部未華子さんが演じる、美智子。
遊ぶときは、しっかり遊ぶし。
人生設計の立て方も、その見直しも、実に堅実でした。
美智子と典子は、同い年のいとこ同士。
なんでも話せる間柄のようですね。
典子いわく、「美智子は、竹を割ったような性格……らしい」。
彼女を素直だと、嬉しそうに評したのは、典子のお父さん。
親元から離れて暮らす美智子のことを、我が子同様に見守ってるみたいだったなぁ。
私は彼女が大好きなんです。
劇中で典子が、ある女性に憧れるように。
美智子のようになれたらいいのに、って何度も思いました。
たとえば、美智子が就職してからも、お稽古を続けてるシーン。
砂浜で語り合ってた場面や、初めて迎えた夏の場面を思い出し、感極まって泣きそうになりました。
キーワードは「みちのり」なのでは?
フェリーニの『道』
イタリア映画の巨匠、フェデリコ・フェリーニ。
彼が脚本を共同執筆し、監督した映画が『道』ですね。
主な登場人物は、二人。
大道芸人の、ザンパノ。
彼が助手として雇った、ジェルソミーナ。
荒々しくて乱暴なザンパノと、素直な心をもつジェルソミーナは、各地を転々としながら暮らす、旅芸人でした。
あるとき、旅回りのサーカスと一緒になり。
二人の旅は、ゆっくりと確実に、形を変えて……。
10歳の典子にとっては「貧しい旅芸人の話で、とにかく暗い」作品だったんですね。
典子と美智子が、海に出かける場面。
じ~んとしました。
彼女たちは、学生生活の途中で進路を決めて、就職試験を受けるんですよね。
自分の将来について、真剣に語り合う二人。
しんみりしたところで、典子がひとり、波打ち際に駆けていく。
大きな声で「ザンパ~ノ~!」って、言ったあと。
「チチチチチッ、ヘイッ♪」と、口ずさみながら踊るんです。
美智子は『道』を観ていたのかな?
そういえば、劇中では触れられてませんね。
あの場面で彼女が典子に問いかけた言葉も、そのときの表情も、ほんとうに秀逸でした。
典子も、素敵な人だなぁって思います。
さっぱり分からなかったものにリトライして、感動できる柔軟な心を持っている。
私は、その昔『道』を観たんですが、やっぱり分からなくてそれっきりになってます。
再チャレンジ、してみようかな。
茶道
キーポイントは『道』のほか。
「茶道」や「従姉妹」、「大切な人」。
それに「美智子と典子の名前」だと思ってます。
『日日是好日』は、ただ寄り添ってくれている、そんな作品だと思いました。
実を言いますと、私。
この映画を初めて観たあと、動けなくなってしまったんです。
これまでの自分の悪行が走馬灯のように駆けめぐり、自己嫌悪に襲われて、息が苦しくなりまして。
はた、と気づきます。
今さら後悔して体調崩すなんて、どんだけ自己中心的な人間なんだ、と泣きたくなりました。
『日日是好日』は、ただ寄り添ってくれる映画だと思います。
正解を、簡単に教えてくれる訳じゃない。
ああしろこうしろなんて、一言もありません。
当たり前ですよね。
自分で気づかないと、何の意味もありません。
自分の無力さに打ちのめされて、身動きもできないような心境のとき。
そっと心をすくいあげてくれるような映画だと思いました。
『日日是好日』は、2018年に公開された、日本映画です。
【監督・脚本】大森立嗣
【出演】黒木華、樹木希林、多部未華子、鶴見辰吾、鶴田真由、郡山冬果、山下美月ほか。
【原作】森下典子のエッセイ『日日是好日ー「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』