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池松壮亮さんが演じた、探偵事務所に勤めている青年、町田健斗。
一見したところ、飄々とした雰囲気というか、とらえどころのないような若者だなって思いませんか。
けれども、主人公にとって数少ない、理解者のひとりだと感じるシーンが多々ありまして。
気やすめの言葉じゃない。
背中を押してくれるような、本心からのアドバイスをする好青年だと気づいて嬉しくなりました。
『海よりもまだ深く』の、あらすじをザックリご紹介。
子供の頃から国語の成績が良かった、良多。
15年前、文学賞を受賞して、希望の星だともてはやされたこともありました。
そろそろ中年期に入ろうとしている、今も。
作家として成功したいと望んでいるけど、小説を書き上げることができません。
良多は、興信所で探偵のようなことをして、生計を立てています。
「取材だから」
「小説のリサーチだから」
自分にも周りにも、まるで言い訳してるみたい。
どこか投げやりに見えました。
仕事で立川方面に行けば、聖地だからと競輪場まで足をのばして、負けが込む。
良多の奥さんは、彼と彼の文才を愛してましたが、一人息子を連れて、彼の元を去ってしまう。
ある日、彼は母に内緒で、実家を物色。
何かお宝はないかと探したり。
亡くなった父の、形見になるような品を欲しがったり。
良多は、妻と約束した、養育費の支払いが遅れていました。
息子との、月に一度の面会日まで、あまり日にちがありません。
今回クローズアップした登場人物は、池松壮亮さんが演じる、町田健斗。
『海よりもまだ深く』には、数多くの魅力的な人物が登場します。
良多を演じたのは、阿部寛さん。
見事なダメダメっぷりでしたね。
良多の奥さん役は、真木よう子さん。
彼らの息子役は、吉澤太陽くん。
良多の姉を演じる、小林聡美さんのみならず。
良多の母、淑子さんに扮した樹木希林さんも圧巻でしたね。
そして、町田を演じたのが、池松壮亮さんです。
町田健斗の表情に見惚れてしまう。とりわけ笑顔が素敵でした。
町田は、良多と同じ探偵事務所で働いてます。
所長からも認められてるんでしょうね。
仕事を任されてるシーンもありました。
いなくなった猫を探したり、浮気調査をしたり。
お金の工面に困ってる良多に、町田が助け船を出す場面。
ほろりとさせられるシーンも、たくさんありましたね。
良多が立川の聖地で負けた時も、町田は一緒でした。
少年野球のグローブ代にと、町田が貸してた1万円。
良多が皮算用したあげく、車券を紙吹雪のようにまき散らすのも見てましたね。
良多の息子は、少年野球をしてるんです。
試合の日に、良多のアパートまで迎えに行ったのも町田でした。
妻と息子に内緒で偵察、おっと、観戦に出かける二人。
その朝、雨が降ったことを知っていて「晴れてよかった」って言う町田くん。
なんていい人なんでしょう。
彼のセリフから察するに。
町田は、まだ子供の頃に、親と離れてるみたい。
そして、どうやら良多に借りがあるそうなんです。
覚えてないなら、いいって微笑を浮かべる彼。
とても心に残る笑顔でした。
グチをこぼす良多に、町田が掛けた一言。
良多は離婚するまで、家族の話はほとんどしなかったようですね。
猫を捜してビラを貼ってる場面。
良多と町田の会話も、ふたりの関係性も、すごく好きだなぁって思いました。
「会いたくなったら、向こうから来ますって」
未練をたちきれない良多に、穏やかに声を掛ける町田。
こう言われた良多は、自分と息子のいつか来るであろう、その日のことを考えてました。
映画を観ている私は、別のことで頭がいっぱいです。
町田は、どんな気持ちで言葉にしたんだろう。
20歳の時、それより前、それから後。
彼の人生は、深く語られません。
町田がどんな人なのか、わからなくて当然なのに、なぜか身近に感じてしまう。
少しだけ、彼の思い出を見せてもらえたような気がする、この場面。
忘れがたい名シーンだと思いました。
『海よりもまだ深く』は、2016年に公開された、日本映画です。
【監督・脚本・原案・編集】是枝裕和
【出演】阿部寛、真木よう子、小林聡美、リリー・フランキー、池松壮亮、中村ゆり、吉澤太陽、橋爪功、樹木希林ほか。
【音楽】ハナレグミ(永積崇)
【主題歌】ハナレグミの『深呼吸』
町田は、良多が離婚する前から、彼をよく知っていて。
できる範囲で、見守ってたんでしょうね。
良多は、なりたかった大人とは程遠い、今の自分を変えてくれるものを求めていたんだと思うんです。
町田が良多に掛けた、いくつもの言葉。
思いやりの心が伝わってきて、いつ観ても嬉しくなります。