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彼ら3人が、幼なじみに扮した時代劇。
『合葬』(がっそう)について、あれこれ考察してみたいと思います。
『合葬』とは?
時は、慶応4年(1868年)。
明治時代が幕を開けたこの年、江戸幕府の解体に伴い、世の中は大きく変わりました。
この歴史的変革は、若者たちを数奇な運命へと導きます。
『合葬』は、急激な時代の変化に翻弄されてゆく人々を描いた、青春時代劇なのです。
「何やら知れぬもの」の正体。
映画が始まって、まもなく。
柾之助は妙なものを見るんです。
「何やら知れぬものが、中で腐っていた」
あれは結局、なんだったんだろう・・・?
ずーっと気に掛かって仕方ありません。
もしかしたら、彼らの運命をも左右したモノ、だったのでは?
明らかにされないままでしたね。
私なりに考察してみました!
思うに、あれは人々の、心残りのようなものだったんじゃないのかな・・・。
冒頭に起きた、別のとある出来事。
幕引きのナレーションは、こうでした。
流れ損ねた、血の猛り。
病み、さまよう様、あやうかりき。
この、流れそこねたモノが、あちらこちらでさまよっていて、何らかの影響を及ぼしてるんじゃないのかな・・・。
柾之助が見た妙なものは、おぞましいほどグロテスクでした。
3人と水たまり。
映画の序盤。
どしゃ降りの日に、茶店で、幼なじみの3人が、久しぶりに揃うようなシーンがありますね。
この場面が私には、どうにも象徴的だと感じられてなりません。
結論から、いってみよう。
柾之助は、軒先で雨宿りして途方に暮れつつもやり過ごしたんでしょうね。
お団子を食べてたら偶然、幼なじみが通りかかって・・・。
水たまりは、避けつつ迂回&飛び越えました。
極は、どしゃ降りのなか、頭に笠を被っただけでズンズン歩いてるんです。
茶店でも、自分の信ずるところに真っ直ぐで・・・。
お団子?ナニそれ。水たまり?あったっけ。
そんな感じで、そのままバシャバシャ突っ切って歩くんです。
悌二郎は、番傘を差してましたね。
極のあとを追っかけて呼び止めるんだけど、最終的に番傘を投げ捨てます。
結果、3人が揃ったとき、一番ずぶ濡れになってるのは悌二郎なんですよね・・・。
茶店では、「情理を尽くして説明」したり、アドバイスしたり、説得を試みたり。
水たまりにも気がついて、一瞬ためらうんだけど、結局控えめにバシャっと行きました。
この水たまりと、劇中で何度となく目にする血だまりが、無関係だと思えないんです。
このたまってるモノこそ何やら知れぬものなんじゃないかと、思わずにはいられません。
幼なじみの3人について。
ザックリかいつまんで、ご紹介しましょう。
吉森柾之助(よしもり まさのすけ)。
瀬戸康史さんが演じました。
養子に入った笠井家は、あんまり居心地よさそうじゃないんですが、のほほん、って言ったら失礼かな・・・。
思慮分別のある、跡継ぎとして申し分ない若者なのです。
義母上は、なんで追い出しちゃったんだろうな?
話を聞いた極から、「どうせ、もう家には戻れまい」と誘われて、彰義隊に入ります。
確固たる信念を持って入隊した訳じゃありません。
途中から、彰義隊の理念にも、友人の極に対しても、どうにも承服しがたいような表情を浮かべるんですよね・・・。
急激な時代の変化に翻弄されたかのように、上野戦争にも加わりました。
福原悌二郎(ふくはら ていじろう)。
岡山天音さんが熱演されました。
福原家は中奥小姓(なかおく こしょう)の、お家柄なんです。が・・・。
江戸幕府が解体され、「上様が、江戸城を明け渡された」ことがどういう意味を持つのか、驚くほど理解し納得しています。
すごいな、悌二郎。
彰義隊についても、「もはや無用の長物以外の何物でもない」とバッサリです。
「上様が恭順の意を表された以上、彰義隊もそれに従い、すぐさま解散するのが、筋である」と言い切ります。
それもこれも、極のため。
ひいては、妹の砂世のためなんですよね。
賢くて、真心がこもってて、合理的な考え方もできて、武芸を磨く努力も怠らない。
彰義隊の存在に疑問を抱きながらも加わらざるをえなかった悌二郎。
極から、再三「帰れ!」と言われるんですが・・・。
逃れられない運命に巻き込まれるかのようにして、上野戦争に向かいました。
秋津極(あきつ きわむ)。
演じたのは、柳楽優弥さんです。
極は、悌二郎の妹砂世(さよ)と縁組みしていたんですが、映画の序盤で破談を申し入れました。
「その通り。心中立てだ。
ただし相手は女じゃない。徳川家だ!」
悌二郎いわく、心中立て(しんじゅう だて)=駆け落ち、なんだそう。
肝が据わってると言うよりも、目が据わってます。
この前日。
徳川慶喜は、新政府に江戸城を明け渡し、水戸へ謹慎したんですね。
「上様のお見送りをした」極。
砂世との縁組みを破談にし、秋津家の家督を弟に譲り・・・。
何もかも、家を捨ててまで彰義隊にのめり込んでいくのです。
もちろん上野戦争にも、気概に満ちた様子で加わりました。
雨中の決戦。
終盤。
砲声と銃声が響き渡る、どしゃ降りの中。
やっぱり水たまりが関わってくるんです。
私は、あの日の水たまりを、思わずにはいられなくなりました。
『合葬』は
2015年に公開された、日本映画です。
監督は、小林達夫。
出演は、柳楽優弥、瀬戸康史、岡山天音、オダギリジョー、隆大介、飴屋法水、井之脇海、門脇麦、桜井美南、高山侑子、峯村リエ、小市慢太郎、りりィほか。
ナレーションは、カヒミ・カリィ。
原作は、杉浦日向子の『合葬』。
脚本は、渡辺あや。
音楽は、ASA-CHANG&巡礼です。
ラストシーン。
油紙に包まれた写真がクローズアップされるんです。
あの日、写真館で撮ったものが、ここで登場するのか!と、衝撃を受けました。
ありし日の姿をみる、彼の眼差しは必見です。