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『十三人の刺客』とは?
幕末の日本を描いてますが、フィクションであり登場人物、団体名等は架空の映画です。
明石潘主の斉韶(なりつぐ)は、血も涙もない極めて残忍な殿様なんです。
弘化元年三月。
幕府の老中土井家の門前で、明石潘の家老が切腹自害します。
命がけで、主君の残忍さを訴えたのでした。
ところが。
将軍の弟にあたる斉韶には、おとがめなし。それどころか来年、老中職に就任することが内定しています。
さすがにマズいと考えた土井は、斉韶を暗殺するしかないと、島田新左衛門を呼び付けるのでした。
おすすめポイントその1。稲垣吾郎の怪演。
お師匠さんに、おすすめ映画を尋ねましたら、「目の付けどころは稲垣吾郎」的なアドバイスをもらいまして。
ほんとに強烈な印象で驚かされました!
とにかく不気味なんです。
狂ってるんだけど、正気なのかもしれないような。
むごいことを平気でする、残酷極まりない悪逆無道な暴君を、サラッと演じてるように見えました。すごい。
明石藩主、松平左兵衛督斉韶(まつだいら さひょうえのかみ なりつぐ)。
先の将軍家ご実子であり、時の将軍の異母弟でもある、由緒正しい血筋のお殿様。
もともと明石松平家には、跡継ぎがいたようなんですが、いろんな事情や思惑もあるんでしょうね。
養子縁組した斉韶が主君なのです。
孤立無援だと、思い込んでた?
映画の序盤に、斉韶の印象的なセリフがありました。
「武士とはなんだ?半兵衛。みな日頃、忠義忠義と念仏のように唱えておる。」
この場面。
目もあてられない程むごたらしくて、忘れようがないんですが、とても重要なシーンだと思います。
セリフも長くて、気になる部分が多い。
たとえば、これ。
「公儀お墨付きの、かような忠義の家来を持ったからには」
これは、切腹自害した家老間宮のことを言ってるんでしょうけども。
公儀お墨付き=幕府から与えられた、家来。
養子縁組で藩主になった自分の周りに、「主に尽くすという、武士の本義」を忘れてない家来がいるのか疑心暗鬼になってるのかな?と、深読みしてしまいました。
このセリフは、市村正親さん演じる鬼頭半兵衛に向けたものでしたね。
鬼頭半兵衛(きとう はんべえ)。
半兵衛は、最初から最後まで侍らしくあろうとして、葛藤に苦しみながらも初志貫徹した人物だと思うんです。
斉韶は、半兵衛のことを認めてるけど信じきれなかったんでしょうか?
それとも徳川の世に憂いをいだいて、自分もろともぶっ壊してほしいと思ってたのかな。
とは言うものの。
『十三人の刺客』は、斉韶がなにがなんでも討たねばならない悪じゃなければ、お話になりません。
そんな人物を演じきった稲垣吾郎さん。
すさまじい迫力でした。
おすすめポイントその2。ラストシーン。
ある人物が、よろよろと歩いてきます。
おびただしい数のなきがらが横たわっていて、あちらこちらで火の手が上がってます。
突発的な出来事が起こり・・・、彼は立ち止まり、再び歩き始めるのですが。
絶妙なタイミングで、後方の建物に取り付けられてたハシゴが焼け落ちました。
大きな音とともに崩れ落ち、驚いた馬が一声いななきます。
ここで、彼がにやりとわらうんです。
この表情が、なんとも言えなくて。
嬉しいのか、安心したのか、嘲笑なのか。
もしかしたら、自分で自分をあざけてるの?
どう解釈したら正しいのやら、複雑な表情なんです。
そんなとき、あるテレビ番組を見ました。
安藤桃子さんの「シネアスト」。
山田康介さんがゲストの回でした。
そんな裏話があったのか!
その事情が全てではないとは思いますが、胸にストンと落ちました。
ネタバレになるので、おしまいに書きますね。
残虐な場面にご注意ください。
極めて残忍な男が権力の座に着こうとしているのを、阻止しようとする侍たちの物語です。
思わず目を背けてしまう場面が、これでもかと言うくらい出てきます。
役所広司さんが演じた島田新左衛門(しまだ しんざえもん)。
幕府大目付、旗本のお家柄の新左衛門は、老中の土井が選んだ暗殺の首謀者なんですが。
農民一揆の首謀者の娘と対面したとき、感情のコントロールが出来なくなったのか、思わず小さく笑ってしまうんです。
彼ほどのお侍さんでもショックを受ける光景ですが、これだけでは終わりません。
映画が進むにつれ、より衝撃的に、より凄惨なシーンが次々あらわれます。
終幕。
弘化元年、五月。
斉韶は「参勤交代の道中で病を発した」ことにされますね。
そして「この二十三年後、徳川幕府は消滅。
明治となる」んです。
なんとも後味の悪い幕切れだなあと思う反面。
ラストシーンの木賀小弥太が象徴的で。
本能のおもむくまま、心の声に素直になってみるのも悪くない、というメッセージが込められてるんでしょうか?
いやいや、それだと斉韶になっちゃうのか。
う~ん。もう一回、観てみます。
『十三人の刺客』は
2010年に公開された、日本映画です。
監督は、三池崇史。
出演は、役所広司、山田孝之、伊勢谷友介、沢村一樹、古田新太、六角精児、浪岡一喜、近藤公園、窪田正孝、伊原剛志、松方弘樹、吹石一恵、谷村美月、斎藤工、上杉祥三、斎藤歩、内野聖陽、光石研、岸部一徳、平幹二朗、松本幸四郎、稲垣吾郎、市村正親ほか。
原作は、池宮彰一郎の「十三人の刺客」。
脚本は、天願大介。
撮影監督は、北信康。
美術監督は、林田裕至です。
番組では、「その日の撮影は時間との戦い」で奇跡が起きたようだった、というニュアンスのお話をされてました。
もいちど見たいな、「シネアスト」。
十三人目の刺客、木賀小弥太について、私が勝手に考えたこと・・・。
島田新六郎が呆気にとられたように「おまえ不死身か」と言いました。
あの場面、私もビックリしたんですが、逆に「やっぱり、そうなのかも」って思いました。
小弥太は、人のかたちをしているけれど、人ならざるものなのでは?
生きてるとか生きてないとか、そもそも無縁の存在なのかも。