こんなにも切ない映画だったんですね。
しばらくの間、言葉足らずで伝えられずにおりました。
『ティファニーで朝食を』は
1961年に作られた、アメリカ映画です。
監督は、ブレイク・エドワーズ。
出演は、オードリー・ヘプバーン、ジョージ・ペパード、パトリシア・ニール、ミッキー・ルーニー、マーティン・バルサムほか。
原作は、トルーマン・カポーティ。
脚本は、ジョージ・アクセルロッド。
音楽は、ヘンリー・マンシーニです。
ニューヨークのアパート。
ホリー・ゴライトリーは、まるで引っ越したばかりのように見える部屋に住んでいます。
「持ち物は、安住の地を得てから」
名前を持たない猫と暮らしはじめて、もう1年が経っていました。
自由奔放に振る舞う彼女は、上の階に越してきたポール・バージャックと、知り合ってほどなく友達になるのですが・・・。
ポールの優しさが切ないのです。
「嫌なら追い出していいけど、居させて。
非常階段は寒いわ」
ホリーとポールが出会った日の夜、というか朝の4時を回っていますから、翌早朝と言うべきでしょうか。
自分の部屋から逃げ出して来たホリーを、「ニューヨークにも、近所づきあいがあるとはね」なんて憎まれ口をききながら、そのまま居させてくれるポール。
非常階段に面した、施錠してない窓から彼女がやって来るまでは、眠っていた彼。
侵入者にビックリして目を覚ましたのですから、寝起きなんですよね。
眠たいでしょうし、戸惑っただろうと思うんですが、ホリーとポールは、いろんな話をするんです。
「あなた、優しいわ」
彼女が彼に、こう言いますが・・・。
このシーンに限らず、映画の始めから終わりまで、ポールは本当に優しくて。
彼にも、彼なりの事情があって、切なくなるのです。
主題曲『ムーン・リバー』は、幸せと共に流れているのでは?
『ティファニーで朝食を』をご存じなくても、この曲を聞かれたことはあるんじゃないでしょうか・・・。
雑踏のなかで、不意に耳にすることが、たまにあります。
誰かの着信音かな?と、なんだか和んでしまいます。
作中、さまざまなシーンで、いろんなアレンジで、繰り返し流れる『ムーン・リバー』。
ラフな服装でギターを抱えた、ホリーの弾き語りバージョンが、私は一番好きなのです。
このシーンを観ていると、「安住の地はそこだよ」と言いたくなるのですが・・・。
このあと、物語は二転三転するのでした。
可愛がっている猫にも、名前をつけられないホリー。
失うことの怖さを深く感じているからこそ、自分の方から手放してしまうのだとしたら・・・。
その気持ち、痛いほどよく分かります。