【ONCE ダブリンの街角で】アイルランドで暮らす、彼と彼女の切ない事情。サントラ収録曲『Falling Slowly』も絶品です。

口に出して説明したりしないけど、人にはそれぞれ、抱えている事情だったり抱えきれないほどの思いがあったりしませんか?

それらを映像と音楽で表現した作品だと思います。

『ONCE ダブリンの街角で』は

2006年に作られた、アイルランド映画です。
監督は、ジョン・カーニー。
出演は、グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ、ビル・ホドネット、ゲオフ・ミノゲほか。

は、アイルランドの首都、ダブリンの街角で、ギターの弾き語りをしています。

ある夜のこと。
思いの丈を歌にぶつけていた彼の前で、足を止めた彼女

彼と彼女が出会う場面ですが、単なるボーイ・ミーツ・ガールとは違うような気がします。
彼らの心に抱えているモノが、だんだん明らかになっていくのですが・・・。

(私は前回、この映画について熱を入れ過ぎてしまいました。
今回はサラッとを目指してみたいと思います。)

足を止めた、彼女の事情。

散々な目にあった日の夜、人通りの少なくなった街角で胸の内を吐き出すように歌う

その前で足を止めたのは、若い女性でした。

彼女は歌を聴いたあと、彼のギターケースに10セントいれました。
彼はバンザイして「ありがとう。10セント! すごい!」と、おどけたように言いますが、彼女は真顔です。

2006年のアイルランド通貨が、日本円でいくら位なのか分からないんですが・・・。
100セント=1ユーロ。1ユーロ=127円(2018年5月現在)。
ということは、10セントは15円に満たない、でしょうか・・・?

のちのち、彼女にとって10セントどんな意味を持ってるのか、言葉と音楽とで判明します。

彼にしてみれば、通りすがりの女性にとって自分の歌は10セントの価値しかない、と思ったのかも知れません。

けれど、物語が進むにつれて・・・。
どれほど大きく彼女の心を震わせたのか。
10セントに、どれだけ大きな価値があるのか。
少しずつ描かれていくんです。

とはいえ、この映画の素敵なところは、前向きな気持ちになれること。
暗いとかジメジメしてる、なんてことはありません。
時に、淡々と表現するほうが、より心に刺さるんだなと、改めて感じました。

(前回、2018年1月の時点では、1ユーロ=135円でした。
もちろん、物価との兼ね合いもあるかと思いますので、これだけで何か分かったような気になってはダメだとは思うのですが・・・。
節約しなくちゃと思ってる私には、やっぱりヒトゴトだと割りきれなくて、切なくなってしまいます。)

彼女の歌にも、心をつかまれました。

その翌日。
ひょんなことから彼は、彼女が弾くピアノの音色を聴くのですが・・・。

彼女の奏でるメンデルスゾーンを聴いた、彼の表情が素晴らしいんです。

ふたりは、彼のオリジナルソングを即興で合わせてみることにしました。
彼はギターの弾き語り。
彼女はピアノの弾き語り。
(この曲は、サントラにも収録されている『フォーリング・スローリー』ですね。)

彼女のコーラスを聴いた彼の表情も素敵なんです。
おそらく、ビックリしたり嬉しくなったりしてるんでしょうね。表情がクルクル変わります。
その気持ち、よく分かるなあ。
音楽に詳しくない私でも、彼女のピアノに、歌声に、心を揺り動かされてしまうんです。

彼の歌には、感情をぶつけるようなドラマティックな印象もあるんですが・・・。
彼女の歌は、ポツリポツリと穏やかに、ストンと心に落ちるような、柔らかい感じがありました。


はろこ

彼の事情も、ですけれど。
彼女の置かれている状況や葛藤など、明らかになるにつれ、すっかり感情移入してしまいました。
観るひとの、その時々の心境によって、解釈が変わってしまうかも知れませんね。
映像とセリフと音楽が、強く心に迫るんです。
事あるごとに、何度でも観たくなります。