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名画と呼ばれ、長く愛され続ける作品には、しばらく茫然としてしまうほどの、感情を強く揺さぶるチカラがありました。
『ミニヴァー夫人』は
1942年に作られた、アメリカ映画です。
監督は、ウィリアム・ワイラー。
出演は、グリア・ガースン、ウォルター・ピジョン、テレサ・ライト、リチャード・ネイ、デイム・メイ・ウィッティ、ヘンリー・トラヴァース、クレア・サンディス、クリストファー・セヴェリン、ブレンダ・フォーブス、ヘルムート・ダンティンほか。
原作は、ジャン・ストラッサーの『ミニヴァー夫人』。
脚色は、アーサー・ウィンペリス、ジョージ・フローシェル、ジェームズ・ヒルトン、クローディン・ウエストです。
たくさんの人が往来する、にぎやかな街並み。
二階建てバスやクラシックカーも、頻繁に行き交っています。
ダブルデッカーの行先標、サウスフィールズと読めました。
ここはロンドンでしょうか。
お洒落をした美しい女性が、たくさんの包みを抱えています。
自分のことを、「浪費家で、収入も考えず、ぜいたくばかり。」と言っている、彼女がミニヴァー夫人。
駅で偶然乗り合わせた、牧師さんやレディ・ベルドンとの会話を楽しむうち、列車はベルハムに到着します・・・。
ポーランド侵攻を間近に控えた、イギリスが舞台のモノクローム作品。
1939年の夏に始まる、イギリスの中流一家の物語です。
太陽の下で、愉快に暮らし、子育てや庭いじりに、いそしんでいます。
ただ、この平和なイギリスにも、戦争の影が、忍び寄っていたのです。
冒頭、画面に映し出された文字を目で追っていると、『英国王のスピーチ』が、フッと頭をかすめます。
一瞬考えてしまったのは、「どうやら心温まる映画では、なさそうだなあ」と。
ミニヴァー家の人々の日常を、明るく美しいミニヴァー夫人を中心に、描いた作品。
というのが、事前情報だったのですが・・・。
二転三転するストーリーに、すっかり引き込まれてしまう。
序盤で描かれる、ミニヴァー夫人の日常は、今から70年以上も前なのに、むしろ憧れてしまうくらいです。
戦争の影も、それほど感じられません。
映画の途中まで、ミニヴァー夫人のことを、美しく機知に富んでいる女性だけど、愉快で幸せな世界に住む人だと感じたのです。
中盤以降、徐々に戦禍を被るようになります。
ダンケルクの戦いも描かれます。
ドイツ兵に脅かされる場面もありますし、空襲も激しくなります。
ミニヴァー家は、不安な気持ちを機知に富んだ方法で、まぎわらせようと奮闘します。
終盤に近づいても、戦火の最中でさえ、ギリギリのところで惨禍を逃れることができるのです。
そして、物語の終盤。
思いもよらない展開に、ただただ茫然とするのでした・・・。
争うことの虚しさを、改めて痛感する映画です。
「The End」を目にしても、しばらく動けませんでした。
できることなら、世界中の人々が、無用な争いから遠いところに、いられたらいいのに、と願ってやみません。